推進体制
"なぜ途上国でITなのか?"
"なぜ医療自体の支援ではなく、医療を提供する仕組みの支援なのか?"
この活動をしていると、そんなご質問をいただくことがよくあります。それぞれ、
「今あるものでは足りていないから、補うために、ITの力を借りる」「医療そのものを提供すると、私達が去ったあとに何も残らない。日本から支援をするのなら、現地の仕組みづくりのお手伝いをすべき」
と考えているのですが、ここでは、そんなASHAの活動を開始するまでの経緯を少しご紹介できればと思います。
きっかけは、2015年4月に発生したネパール大震災。当時、公衆衛生の大学院に入学したばかりのサッキャと任は、大震災の前日に出会いました。その翌日、まさかネパールで大地震が起こるとは全く思いもせず、ネパール出身の医師・サッキャと、大学の学部の卒論でネパールの医療について書いた任はネパール談義に花を咲かせていました。
出会いから半日も立たないうちに、ネパール大震災が発生し、その出会いに何か運命的なものを感じた2人は、その後、何かネパールで支援をできないかを検討します。
結局、現地で活動するNGOの協力も得ながら、ネパールの震源地近くの村でヘルスキャンプ(出張診療)を行いました。すると、その村にとっては、4年ぶりに来た医師だと言うサッキャの診察には長蛇の列・・・結局2日間同行メンバー総出で患者さんの診療を行いました。
ただ、日本に帰ってきて2人が感じたのは、
「誰も何も村人の健康について理解していなかったのに、本当にすべきことはできていたのか?」
「今後もしあの村に医師が行っても、自分たちと同じことを感じて終わるのではないか」
「それどころか、自分たちが行ったことは、この先何も続かないのではないか?」
といったことでした。
その原因を考えると、医療職が折角医療を提供しても、何の記録も保管されていない、活用されて
いないことなのではないか・・・?という考えに行き着きました。そこで私達が思いついたのが、
「医療の情報を適切に管理するサポートをすることで、継続的に医療を提供することも、医療のニーズを可視化して最適な医療・保健サービスを提供することもできるのではないか?」
というアイデアでした。
当時、偶然にも大学院で、情報工学系や医学系がコラボするプログラムを副専攻としていた2人は、その場を活用し、力強いメンバーを得て、NPO法人ASHAの前身「ASHA Nepal Project Team」を立ち上げました。
2015年 10月
"ASHA Nepal Project" 始動
2015年9月のサッキャ・任のネパール渡航を受け、東京大学グローバル・クリエイティブ・リーダープログラム内のプロジェクトとして任意団体「ASHA Nepal project」発足
2016年 3月
医療機器管理ソフトASHA fusion初版完成&第1号プロジェクト開始
ASHAオリジナルの医療機器管理ソフトASHA fusionの初期バージョンが完成し、ネパール南部のChitwanにて行われた出張診療で導入(Chitwan Project)
2016年 9月
ASHA fusion v2.0完成&初の医療機関向けプロジェクト開始
Chitwan Projectを受け、出張診療だけでなく医療機関に対応したASHA fusionのバージョン2.0が完成。カトマンズより2時間の地域にあるTrishuli Clinicに導入実証開始
2017年 4月
Dhlikhel Hospitalとのプロジェクト(Dhlikhel Project)開始
ネパール郊外の大学病院 Dhlikhel Hospitalが運営する簡易診療所においてASHA fusion v2.0を導入開始
2017年 10月
NPO法人化
プロジェクトメンバーの大半が大学院から離れたため、東京大学内のプロジェクトから特定非営利活動法人としてスピンアウト
2018年 4月
Pharping Project 開始
更にアップデートしたASHA fusionをカトマンズより2時間程度の場所にある地域の中核病院 Manmohan Memorial Community Hospital (Pharping)へ導入開始
2018年 9月
Rajpur Project 始動
現地NGO・Karma Health代表Bishal Belbase医師と出会い、従来の医療機関向けの支援活動だけでなく地域全体の医療提供モデルを創るプロジェクトを開始
2019年
現地専従スタッフの初雇用
Rajpur Projectの本格的な実装を機に、初めて現地専従スタッフの雇用を開始。より現地との連携を取りやすくなる。
2020年
大学生インターンがASHAでの活動を開始
2021年 5月
"Vision Hacker Award 2021"でASHAが大賞を受賞
国際保健・グローバルヘルス分野へ挑む、次世代リーダーを発掘・育成するアワード「Vision Hacker Awards 2021 for SDG 3」で大賞を受賞